大阪府堺市/S様 50代男性
■私の2年半に及ぶコロナ後遺症治療における鍼灸治療アプローチについて (2024年1月)
①コロナ罹患は2年半前
私は、2年半前まで、超多忙な毎日ながらも充実した日常をすごしていた、平凡な50代の年相応に健康な男性サラリーマンでした。
そんな私を、私の家族を、突然、理不尽で非日常な日々に突き落としたのは、3回目の非常事態宣言下の2021年5月でした。いわゆるコロナ禍の第4波で猛威を振るっていた新型コロナウィルスのアルファ株(武漢株から変異流行したイギリス株と呼ばれていた最初の変異株)に、家族4人が感染してしまったことです。最初に市中感染した義母から同居していた義父へ、その義母を看病していたかみさん、そして、義母とかみさんに付き添って、PCR検査の為に病院へ車で送迎した私が、次々と感染してしまいました。
その当時、すでに、医療崩壊していた大阪府の状況下において、義母は入院先が見つからずに最終的には手遅れで亡くなり、義父はなんとか入院でき、かみさんはホテル隔離、そして、私はホテル隔離から病態が悪化し、高熱と呼吸困難に陥り、呼吸器専門の国立病院へ緊急搬送され、入院することになりました。
私の症状は、いわゆるコロナウィルス感染性肺炎の中等症Ⅱの状態で、ICU室でのECMOを装着する一歩手前で、当時緊急承認されていた抗ウィルス薬やステロイド系抗炎症薬が功を奏して、2週間の入院を経て、5月末に退院でき、6月中旬に仕事に復帰しました。
②重いコロナ後遺症に
これでやっと、我が家を襲った悲劇から立ち直ろうとしていた矢先、本当の地獄が始まったのは、7月初旬、私に、いわゆるコロナ後遺症(Long-covid)と呼ばれる症状が発症し、就労不可能なほど悪化して、仕事を休職せざるを得なくなった事でした。私は、2021年7月から2023年12月の約2年半、傷病休職ということで、自宅療養することになってしまいました。
私の後遺症の主訴は、①眼痛、②鼻腔奥の刺激痛臭、③頭痛、④ブレインフォグ、⑤PEM(Post-exertional Malase:労作後倦怠感)、⑥高血圧・頻脈、⑥その他・・・、という症状でした。特に①眼痛は、囲炉裏の遠赤外線で眼球をコトコト焼かれるような鈍い熱い鈍痛、②の鼻腔奥の刺激痛臭は、プールの塩素系の消毒薬の水が鼻に入った時のようなツーンと鼻につく刺激と臭いが1日中する状態(臭覚異常や味覚異常はなかったのですが)、③の頭痛はその①と②が折り重なって、眼の上から後頭部、首の付け根に向けて焼き串でグリグリされるような鈍痛、そして、④のブレインフォグは頭がボーっとしてマルチタスクができない、短期記憶障害のような症状でした。
そして、さらに、最悪だったのは⑤のPEMと呼ばれる労作後の異常な倦怠感と、それから来るクラッシュと呼ばれる準寝たきりのような状態に陥る症状が長期にわたり続くというものでした。倦怠感と一言でいうと、何か体が重くてだる~い、というような日常的な疲れのようなイメージがあるかもしれませんが、PEM/クラッシュという状態は、物理的に体を動かす労作だけではなく、脳疲労を起こすような状態、例えば、集中してPCでの仕事をしたり、買い物をするときに商品の色々な情報(値段、消費期限、色、形、重さ・・・等々)を視覚情報から頭の中で情報処理して何等かの判断をするような事をした後、また、車の運転や野球場にいった時に、物の高速な移動や光、大小、広い・狭い、遠近、明暗のコントラストにより、①の眼痛もトリガーとなって脳疲労を起こし、②頭痛や発熱を伴って、最終的にティッシュ1枚も持ち上げられないような体が動かせなくなる倦怠感と、1日中服を着たままプールで泳いだ後、なんとかプールサイドに体を引き上げて出ようとした瞬間に、後ろから服ごと引っ張られて水中に引きずり込まれるような没入感とともに、道端でもどこでも突っ伏して昏睡してしまうような睡魔がズドーンと来るような感じで、2~3日から1週間、酷い時には1か月近く、準寝たきりになるような状態になっていました。
③コロナ後遺症の治療を求めて
2021年当時、まだ、コロナ後遺症という言葉もあまり定着しておらず、後遺症外来を名言して治療にあたっている病院も少なく、国や厚労省、自治体からの情報も乏しい状態で、大阪府下でも、ネットでヒットした堺にある某外来病院に急いで飛び込んだのが、2021年7月17日でした。そこでは、コロナ後遺症と明確に診断書を発行してもらい、会社の休職手続き等スムーズにできたのですが、まだ、世界中の研究者、科学者、医学博士、臨床医においても、コロナ後遺症の発症機序が不明で、治療方法も確立されていない手探りな状態で、鎮痛薬と倦怠感や頭痛のような不定愁訴な症状に昔から効くと言われてきた市販の漢方薬を処方されるような対処療法でしかアプローチする方法がなく、通院を始めて1カ月、3カ月と経過しても、症状はあまり軽快せず、途方に暮れるしかなかった状況が続いていました。
④鍼灸治療との出会い
そういう時に、出会ったのが、熊本さんの鍼灸治療でした。かみさんの知人の看護師の方から紹介を受けて、藁をもすがる気持ちで鍼灸院を訪れたのが、2021年12月頃でした。熊本さんが施術される鍼灸治療は、ご紹介ページにも記載されている通り、弁証論治(問診、触診、脈診、舌診等)アプローチで、その日の状態をじっくり時間をかけて体表観察し、診断するのを毎回行い、その時の病巣を判断して、体のツボ・経絡のただ1点のみ(2点の時もありますが)に、無痛の細い和鍼を打つ、というスタイルのものでした。私の場合は、上述の厳しい後遺症の症状、それも、西洋医学的には治療法が解明されていない未知の病状です。そんな時に、熊本さんの初診時の一番最初の鍼を打った場所は、照海(しょうかい)と呼ばれる左足くるぶし内側の下にあるツボ・経絡でした。その時の状況を明確に覚えていますが、まるで、体の中をかき混ぜられているような感触が続き、上半身の熱を持った異常な状態とお腹の下から足にかけての冷たい虚弱なアンバランスな状態がす~っと平準化されて、下肢が暖かくなった感触、そして、上記①~③の後遺症の症状が数時間、激しく作用するような好転反応のような状態になりました。
私は、職業柄(ソフトウェア・エンジニア)、科学的・理論的アプローチによる判断がビジネス上重要だと叩き込まれてきた者のつもりでしたので、当初は、鍼灸治療自体や東洋医学的なアプローチについては、少し懐疑的な所があったのですが、その初日の第1鍼・第1打の体の反応には、正直、驚愕したのを覚えています。この治療アプローチには、西洋医学では治療法も診断法もない、まだ未知なコロナ後遺症という病態において、東洋医学、鍼灸治療のアプローチが有効ではないか!、という可能性を見出せた瞬間でした。鍼灸治療のルーツ、発症・経緯の詳細は知り得ないのですが、考えてみますと、たかだが200年程度の近代西洋医学の発展の歴史に対して、現代の東洋医学や鍼灸治療の源流を中国が発症ルーツと考えるならば、数千年にわる長い年月をかけて蓄積臨床されてきて、統計学的に有意な事例と治験を経て構築されているとすれば、この未知のコロナ後遺症という治療にこそ、人間の体の根本的な病巣に対してアプローチする東洋医学、鍼灸治療が、一筋の光に思えました。
2021年12月初診以降、実に2年の間、熊本さんにはお世話になりました。症状が重かった当初は、2回/週ペースから始まり、全体的な倦怠感やブレインフォグの症状には、早くも効果がありました。それ以降、①眼痛、③頭痛、⑤PEM症状等にも効果が出始め、軽快・回復具合に合わせて、1回/週から隔週、1回/3週間へと体調に合わせてペース頻度も調整してきました。
また、問診時には、見る夢の話や、音楽、ペットの話、夫婦喧嘩の話など他愛もない話から精神状態もみつつ、負のオーラは脈診や身体の気・血・水にも影響するとのことで、よく、話をさせてもらいました。そういった治療施術を約2年半続けてきて、ようやく2023年12月にある程度寛解・快癒状態となり、元の仕事に復職し、フルタイムの在宅テレワークでほぼ問題なく就労できております。
⑤日常を取り戻し新たなスタートへ
今、振り返ると、決して、東洋医学、鍼灸治療だけでコロナ後遺症が治った!、とまでは言い切れませんが、4th Opinionまで探し歩いた後遺症外来での治療、3つの耳鼻咽喉科、2つの眼科を探し歩きそれらの治療知見も受けながら、また、世界中の最新の医学論文や雑誌に投稿された医学的な根拠に基づくサプリメント類の服用や治療方法など、出来うる限りのことを試行してきた中でそれらと相まって、鍼灸治療の効果は、人間の身体の根本的な治癒力、回復力を下支えし、西洋医学の投薬治療の効果を引き出して全体的な効果をあげてくれたものと考えています。おそらく、西洋医学の薬や施術だけでは、ここまで軽快・快癒してこなかったと思います。確かに、人によって、鍼灸治療は、合う・合わないや、効果の相対差があるかとは思いますが、私の2年半に渡るコロナ後遺症治療においては、かなり効果があったと考えます。ここまでこれたのも、熊本さんのおかげと、感謝しております。
私が仕事に復職できたことが、我が家を襲ったコロナ禍における最後の決着、2年半前の日常を取り戻すスタートになりました。
熊本さんの手、無痛の細い和鍼、一撃必殺の一鍼には、現実的にも、医学的にも、治療・治癒の力が宿っています。
今後は、1回/月くらいのペースで、身体のメンテナンス、調整という意味合いと、まだ、完全には寛解していない症状の①眼痛の軽快・快癒を目指して、通院する予定でおります。今後とも、よろしくお願いします。
*S様はご自宅に近い堺市の鍼灸大仙堂で治療させていただきました。コロナ後遺症の重い症状が楽になっていただけるよう、あたりまえの日常を取り戻していただけるよう、常に内臓バランスをみて鍼灸治療をしてきました。2年半ぶりのご復帰、本当におめでとうございます!これからも応援させてくださいね。(熊本 和)
*写真はS様からいただいたバンクシーの絵。隣には春を告げる水仙。